「とても雰囲気の違うメロディで」とか、
「とても面白い表現」とか、

上手いとも下手とも言わぬ、妙に曖昧な感想を述べた。

その昔、少女がペンションのロビーにあるピアノを発見、
オクターブを駆使する「乙女の祈り」を弾くと、

「元気のいい乙女の祈りですこと」
「迫力のある、力強い乙女の祈りで」

とのお言葉を頂戴した。

「アタクシだったら、そうは弾きませんけれど」
「作者の思いをもっと汲んであげて」
「その曲はそういう弾き方ではなく」

みたいな、上から目線の、いかにも自分の方が上手い、
自分の方がその曲をよく知っているみたいな、
誉めてるつもりだろうけど誉めてない、
ライバル心のような敵対心のような、
上手に弾いた彼女らに嫉妬しているかのような、
その言い回しにカチンと来て、イラっとした。

こんな風に言う人はよく見かけるけれど、
悪気はないかもしれないが、その人にとって気分を害する言い方ってこと、
ぜんぜん気づいていないのでしょう。

何がいけないの？
何が気に入らない？
だったら一言、「とてもお上手ね」で、
余計なことは言わなくていいじゃないの。

ケーキを配れば、買ったのか作ったのかわからない人、
作ったと言えばさらにビックリして、
「すごい！」
「おしいかった！」と口々に言う、
リクエストされることもあり、もうイラネって感じの人も。

昔、先輩にお菓子を渡すと、すぐ食べて一言、

「ボクね、おいしいケーキ屋知ってるよ」

それ、どういう意味？
そんな年して頭悪い。

　料理とか音楽とか















　創作、美術、芸術ってのはさ















正解がないでしょ。
「これじゃなきゃダメ」っていう、答えが1つじゃない。

「ナンチャラケーキ」て名乗るのなら、それなりの定義はあるけれども。

「味覚」「聴覚」は目に見えるものでもないし、人が、それぞれ感じることなのです。
自分の感性を、あたかも当然のごとく、他人にも押し付けるのは止めて欲しい。

上手だと思ったら上手って言ってあげて。
おいしいモノはおいしいって言ってあげて。
アタシはアタシ、アナタはアナタ。
これはこれ、それはそれ。

で、いいじゃないですか。
アナタがそれを好きか嫌いかは、聞かれてから言って。

答えが1つじゃないものに、答えを出さなくていいのです。

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